目次
購入した中古住宅に欠陥があった!買主は誰に何を請求できるか?
1 はじめに
不動産会社を媒介として、中古の住居を購入したとします。しかし、購入後、その住居には、欠陥(例えば雨漏り)がある事が発覚したとします。買主は、誰に何を請求できるでしょうか。
2 売主に対する請求
まず、売主に対しては、契約不適合責任に基づいた請求を検討することになります。
契約不適合とは、契約当事者が予定していた内容・品質・性能等と、実際に引き渡された物の内容・品質・性能等とが合致していないことをいいます。そして、契約不適合があると認められた場合には、①追完請求権(傷の修補、取り替え、不足分の引渡しを請求する権利)(民法562条)、②代金減額請求権(民法563条)、③損害賠償請求権(民法564条、415条)、④解除権(民法564条、541条、542条)が行使できる可能性があります。
契約不適合該当性の判断のポイントは、当事者が予定していた契約内容をきちんと確定することです。マンションのような居住用建物の売買であれば、雨漏りが発生しない事を前提に契約していることは明らかといえるでしょう。しかし、築38年経過した中古ビルを購入し、配水管老化による雨漏りが問題となった場合はどうでしょうか。経年変化等による一定程度の損傷が存する事を前提に金額が決まっていたと認定され、配水管老化による雨漏りはその経年変化等による一定程度の損傷の範囲内であり、契約不適合はないと判断される可能性が高くなります(東京地判平成26年1月15日平成25年(ワ)第15563号参照)。
ちなみに、契約不適合責任を免除する特約が定められている場合もあります。売主と買主との関係が「事業者」と「消費者」の関係であれば、消費者契約法8条により、原則としてそのような規定は無効となりますが、「事業者」と「事業者」の契約であれば、契約不適合責任免除特約は有効です。もっとも、例えば雨漏りの存在を疑わせることがあったのに、売主があえてそれを伝えずに契約したといったような事情があれば、信義則上契約不適合責任を主張できる可能性もあります。
3 媒介業者に対する請求
不動産媒介業者には、不動産取引を円滑に契約させる注意義務(民法656条、644条)があり、その一つとしての調査報告義務違反を主張できる場合があります。宅地建物取引の仲介業務は免許制(宅建業法3条1項)がとられ、高度の注意義務が課されています。
もっとも、建築士や不動産鑑定士等のような専門知識や鑑定能力を持っているわけではありません。そのため、例えば、事前に雨漏りの事実を認識していたり、少しの調査で雨漏りが認識できたりする場合はともかく、雨漏りの被害があることをうかがわせるような事情がなかった場合には、調査報告義務違反を主張することは困難です(東京地判平成20年6月4日平成17年(ワ)23484号参照)。
4 まとめ
以上の通り、契約不適合責任を主張するには、契約内容の確定や、誰にどのような請求をしたいのか、その見込み等について、判例等に照らした判断が必要になってきます。契約不適合についてお悩みの際は、当事務所までご相談ください。